理事長挨拶

第66代 理事長
小池 健太朗

 私が幼少期の頃には、家の前にある商店街にはアーケードがついていて、夏には小さいけど活気のあるお祭りがありました。通っていた小学校のすぐ近くは田んぼで、オタマジャクシがいたことを覚えています。長くこの地域から離れて暮らし、数年前に帰ってきたとき、それらはなくなっていました。もちろん、なくなったものだけではありません。竹島の海は当時と比べて綺麗になりましたし、ガマゴリうどんのような素晴らしい名産品も生まれていました。この30年で、他の地域と同様、蒲郡の景色も大きく変わりました。

 人の行動は、小さく見えても確実に社会への影響を持っています。今の蒲郡の景色は、ここで住み暮らす私たち一人ひとりの考え方や行動が源となり作られてきた「結果」です。それは、この地域の未来は、この地域に住む人々の行動によって変えてゆくことができるとも言えます。いまだ多くの制限が課される社会情勢ですが、一般社団法人蒲郡青年会議所として、この地域を構成する当事者としての自覚を持ち、本年も明るい豊かな社会を築き上げる努力を続けて参ります。

 さて、2022年度の蒲郡青年会議所では、「変革の一年 ~持続可能性を探る旅~」というスローガンのもと、大きく3つの柱を掲げます。

・まちづくりとSDGs
・青少年と自然環境
・会員拡大と広報

 3つ目の柱にある通り、本年は広報に力を入れ、蒲郡青年会議所が進める運動の情報はもちろん、私たちが日ごろどのような活動をしているのか、この地域のことなど、多くの情報を発信いたします。本ウェブサイトの他、各種SNSを一度ご覧いただければ幸いです。もし気になることがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。蒲郡青年会議所では、一緒に活動をしていただける地域の皆様を心待ちにしております。

 2020年から猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の影響により、まだ先の見えない状況が続きますが、この地域が将来に渡り持続可能なまちであることを願い、引き続き活動を進めて参りますので、どうか変わらぬご支援ご鞭撻をお願い申し上げます。


理事長所信

変革の一年
~持続可能性を探る旅~

はじめに

 これからの世の中を考えたとき、必ず出てくるキーワードが「SDGs(持続可能な開発目標)」です。2015年に採択されて以来、徐々に人々の認知度は増してきており、テレビや広告など身近でその言葉を聞く機会が増えてきました。2030年までに全世界で達成するこのゴールは、その先を生きる私たちにとっての生活や仕事のルール、共通認識となることは間違いありません。蒲郡市でも新たな総合計画の中にSDGsの考え方が取り入れられ、これからのまちづくりに活かされようとしています。地域が、持続可能性を掲げながらまちづくりを進めていく時代がやってきているのです。

 私たち青年会議所が追い求めている「明るい豊かな社会」に対する一つの考え方として、突如世界規模で提示されたSDGsは、すでに日本のみならず地域を巻き込み、羅針盤としての機能が与えられています。蒲郡青年会議所の運動は、決してその方向性はずれていないものの、これまで組織全体で取り扱ったことがありませんでした。今こそ、蒲郡にもやってきたこの大きな波を活かし、青年会議所の活動や運動を変革し、まちの発展に貢献していきましょう。

SDGsで語りあえるまちをつくろう

 皆さんには、飢餓に苦しんだ経験がどれだけありますか。気候変動と聞いて、どれだけ身近に感じますか。世界の話だったり、一般的に日ごろ意識していない問題だったり、SDGsは呼び方からして小難しそうで、自分とは関係なさそうな印象を受けます。しかし、挙げられている17のゴールは私たち一人ひとりとも関係しており、個人も地域も他人事ではいられません。これから先、まちづくりとSDGsが密接な関係を持つことを考えると、私たち蒲郡青年会議所がこれを学び、蒲郡市や他団体と「SDGs」という共通言語で話ができるようになることは必須です。意識を変えるのは、まずは自分たちからです。これを疎かにしないようにしましょう。

 また、地域課題の解決を目指して活動している市民団体は蒲郡市内にもたくさんありますが、団体同士のつながりは乏しいのが現状です。そもそも、SDGsの17のゴールは、一つひとつ達成するものではなく、ゴール同士の関連性を考えながら、同時に達成していくものです。そのため、それぞれの問題を分断して考えるのではなく、さまざまな問題解決に向かって活動する主体同士がつながり、ともに行動を起こすことで、真に持続可能なまちをつくることが可能になります。そして、ここが青年会議所の腕の見せ所です。青年会議所の良さは、どのようなまちの課題に対しても挑戦していける柔軟な取り組みができることにあります。そして、そんな青年会議所には、さまざまな課題解決に取り組む諸団体の、大きな連帯の中核を担う役割を果たせる可能性があります。

子供が自然環境と接点を持てるまちにしよう

 2030年までにSDGsを達成する担い手は、社会人である私たちであり、子供たちではありません。しかし、蒲郡で生きる子供たちも、将来は持続可能な社会の担い手になっていきます。
 現状を考えると、持続可能な世界を表す経済、自然環境、社会という三つの観点の中で、自然豊かな蒲郡でさえ、大人へ成長する中で必ず通る道となる社会や経済と比べ、自然環境と接する機会は少ない傾向にあります。

 例えば、蒲郡で働く方からこんな話を聞いたことがあります。最近の蒲郡の子はインターネット動画で魚のことは詳しくても、実際に海に遊びに来たこともないんですよ、と。学びも遊びもデジタル化する時代の中で、子供の知識と体験の間に隔たりが出てきているように感じます。人に聞いた知識はもちろん重要ですが、将来、海を守る、森を守るといっても、知らないものを守ろうと思うことは非常に難しいことです。子供たちにSDGsという言葉を教える必要は必ずしもありませんが、蒲郡の豊かな自然と触れ合う体験を通して、心に残る実感を得て、そこで感じたことを自分なりに表現することで環境を理解することは非常に重要です。その経験は、自然に対する知覚を養うこととなり、将来的に、環境面から地域の持続可能性を考える動機につながるはずです。

青年会議所の周りをまちづくりに挑む仲間が集まる場にしよう

 SDGsではパートナーシップを組むこと自体が一つのゴールに設定されています。課題には多くの人で立ち向かう必要があります。まちづくりについても、もちろん同じことが言えます。
 まちは一人では作れません。では、私たち蒲郡青年会議所の会員約50名で、明るい豊かな社会をつくることができるでしょうか。それもやはりできません。だから、私たち青年会議所は、運動を起こし、蒲郡市民が意識を変革するお手伝いをすることを通して、よいまちをつくろうとしているわけです。この意識変革運動の周りには、多くの人が必要になってきます。

 まずは、それを仕掛ける青年会議所会員です。この数が多ければ多いほど、広範な問題に取り組めることは間違いありません。また、青年会議所そのものは、「若者により良く変わる機会を提供する」使命を持つことから、年齢制限があります。40歳になれば等しく卒業するため、当然毎年人数が減少します。人数が多いほうがいいというにも関わらず、です。だからこそ、毎年必ず会員の拡大活動は必要なのです。毎年の会員拡大活動の中で課題となっている候補者の掘り起こしに力を入れながら、翌年度の期首人数が前年度比増になるよう活動を進めていきましょう。

 そして、入会の対象者ではなくても、一緒に仕掛けてくれる人、運動に参加してくれる人、応援してくれる人々も必要です。このような人々を増やしていくためには、私たち青年会議所のことを知ってもらうことが第一に必要です。しかし、残念ながら蒲郡青年会議所は市民に対しての発信力が非常に弱いです。私たちの活動や想いは、蒲郡市民に届いているでしょうか。情報発信をおまけと思わず、真剣に取り組む機会が必要です。今の私たちにとってなにより重要なことは、発信先を増やすことです。ただ単に自分たちの言いたいことを発信するだけでは、人々から近づいてくることはありません。まずは、蒲郡の人々に私たちの発信を見てもらう土台を作ることを目指しましょう。

健康的で人間らしい活動ができる青年会議所にしよう

 誰もが子供のころから知っていることですが、1日は24時間しかありません。私たちはその限られた時間の中でプライベート、仕事、睡眠その他の時間を確保して生きています。
 青年会議所の活動が、社会に良い影響があると信じられれば、どれだけでも自分の時間を使うべきでしょうか。1日が24時間であることを思い出してください。時間は増やすことができません。活動に投入する時間を無理に費やして、影響を受けるのは家族との時間であり、会社の仕事であり、自身の健康です。

 SDGsには、健康や、働きがいといったゴールもあります。私は青年会議所の活動も、健康的で人間らしく取り組めるものであってほしいと思っています。しかし、青年会議所運動の大きさよりも、効率性よりも、今の青年会議所という組織の問題は、何より時間の使いすぎだと感じています。そのような問題設定では、活動の縮小を連想してしまうかもしれませんが、決められた時間の中で活動することは、誰もが参加しやすい環境を作ることでもあり、巡り巡って組織を強くすることにつながることも考えられます。

 そのために、個々の工夫に任せるだけではなく、組織全体でやり方を大きく変えましょう。社会に貢献するために、投入する資源が適切なのか考えましょう。適切な時間か、自分たちですべてを負担する必要があるのか、費やす時間を削減する方法はないのか。これは普段の私たちの仕事にも通じることです。会員の生活と調和のとれた青年会議所活動を目指して、2022年度は時間について考える年にしていきます。

終わりに

 2022年度の終わりには、蒲郡青年会議所はSDGsに取り組んでいますと胸を張って言えるようになりましょう。そのためには、外部に対する運動に関しても、内部で行う活動についても、その両面でSDGsを意識していくことが必要です。それができれば、私たち蒲郡青年会議所という組織そのものや、展開する運動が地域の人々から理解され、将来にわたり必要とされる組織へと成長していけると信じています。

 目指すところを共有できれば、そこに行きつく方法は一つではありません。過去65年にわたる蒲郡青年会議所諸先輩方の、このまちを、そして自分たちを「変えてきた」伝統を受け継ぎ、皆で思い切った行動ができる一年にしていきましょう。