理事長挨拶

第67代 理事長
鈴木 崇之

 平素から一般社団法人蒲郡青年会議所の活動に対し格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 私は蒲郡青年会議所に入会して以来、蒲郡を「自分の大切な人が住みたいと思うまち」にしたいと考え、まちの発展と成長の一助となるよう努めてまいりました。その道中、まちづくりを通じてこれまでの蒲郡を牽引されてきた先輩や、明るい未来へと志す若者と多く出会ってきましたが、世代は違えども、このまちの未来をより良くする気持ちは同じであるということを常に感じています。ただ、その気持ちは単独で動くことが多く、なかなか連携した大きな活動へとつながる機会がありません。蒲郡青年会議所はどのような社会課題にも柔軟に対応できることが大きな強みです。本年度はこの世代間を結び、多世代で同じ未来に向けた活動を地域と共に行いたいと考えています。

 そこで、2023年度は「未来協奏曲(コンチェルト)~希望(ひかり)奏でる次代の音~」をスローガンに掲げ、この3本の柱を軸に誠心誠意運動を起こしてまいります。
・若者が協働できるまち
・社会力を身につけた青少年育成
・学び富む蒲郡青年会議所

 未来に対して、未来のために、多くの人と多くの地域と共に連携して活動してまいりますので、一般社団法人蒲郡青年会議所に対しての変わらぬご支援ご鞭撻をお願いするとともに、日頃より我々の活動にご理解とご協力を賜る全ての皆様の更なるご多幸とご健勝を心から御祈念申し上げ、理事長挨拶とさせていただきます。


理事長所信

未来協奏曲コンチェルト
希望ひかり奏でる次代の音~

 2019年、蒲郡市内3高等学校の生徒対象に開催された未来の有権者教育プログラム「みらいく」という蒲郡青年会議所の例会に参加し、蒲郡の次代を担う若者からこのような辛辣な声を聞きました。「普段、まちのことを考えないので良い機会にはなりましたが、形だけ若者の意見を聞いているように思えた。結局、本音を聞きたいなら言いやすい環境、言いやすい企業、言いやすい人を呼んで開催してくれないと、アイデアを議論してもそれは願望で終わってしまい、現実的に考えることができない」。

 私は、蒲郡に住まう人の本音と事実をそこに感じました。これは一人の発言ですが、10年後、20年後の未来を担う若者はまちを冷淡に分析している傾向があります。その要因は、まちにとって、自身が必要だという当事者意識を感じる十分な機会を、若者に対して今まで与えてこなかったことにあると考えます。伝統的に日本には同質性を重視する文化があると言われていますが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により、生活様式、価値観が新しいものへと変化した時代、未来を語る上で最も重要かつ大きな影響を受ける世代は、新たな感性、価値観を持ちながら表現できる若者たちであると私は確信しています。つまり、我々は彼らと未来に向かって共創していく必要があり、彼らが挑戦できる環境を作り続けることが不可欠なのです。

 一方、蒲郡独自の文化や産業を創り上げ、支え合いの地域へと、この蒲郡を築き上げてきたのは、紛れもなくまちに住まう先輩諸兄姉の弛まない努力と高い志の紡ぐ歴史であり、心から敬意を払うべきであると考えます。我々や若者は、今もまちをけん引している多くの先輩方から知恵や知識を引き継ぐべく、共に行動を起こすべきです。

 若者は感性を、大人は知恵を。
 明るい豊かな社会とは、生きがいを持つ多くのひとがまちに存在し、「社会」「経済」「生活」のため、積極的に挑戦できる社会であると考えます。この実現には若者と大人との協働の波を拡げることが必要です。「個」ではなく、つながりあうまちを意識し、連携して運動を起こしていきましょう。

蒲郡青年会議所の運動

 青年会議所の大きな特色である単年度制。単年で、役割もやることも変わっていく中、我々はどのような運動を起こせばいいのでしょうか。それは、まちや社会課題解決の「仕組みを創りだすこと」と考えます。この仕組み創りの積み重ねこそJC宣言に書かれる「持続可能な地域を創る」につながり、蒲郡青年会議所のブランド価値を生み出します。そのためには、1年間のストーリーを計画段階でデザインし、ストーリーに沿った事業や例会をバックキャスト思考で構築する必要があります。1年後の理想の未来像を描き、その実現のために何が必要か、なぜ必要なのかを考え、「始める」から「続ける」へとつなぎ込むイノベーションを創りだしましょう。

若者が協働できるまちの実現

 私は、まちや行政に関心を持った若者を育成し、若者がまちづくりに参画したいと思えるまちにすることが、蒲郡の未来のために重要であると考えています。これを実現させるためには、若者が蒲郡のまちづくりに意欲的に参画できる環境作りを社会全体で応援する必要があると考えます。

 2021年来、若者の目線で彼らの取り巻く様々な問題を考え、話し合っていく場「蒲郡若者議会」を設立し、多くの若者と活動を共にしてきました。その中で、若者には人をつなぐ大きなエネルギーを持っていることを私は肌で感じました。今年で蒲郡若者議会は3年目を迎えますが、まちにおける若者との交流に対する需要は増加傾向にあります。特に蒲郡で活躍するシニア世代からの若者に対する期待は大きいと感じています。私は、若者が協働できるまちの実現には、このシニア世代からの共感を得ることが必要であると考えます。若者の人をつなぐエネルギーでシニア世代との接点を作り、両世代の視点を合わせた未来を発信することで、まちに対する若者の必要性をより多くの市民に知ってもらいましょう。

 また、2023年、蒲郡は統一地方選挙や市長選挙の年を迎えます。まちを動かすリーダーが、まちの未来についてどのように考えているのかを身近に触れることのできる貴重な年です。若者が将来、自分たちの住みやすいまちや環境を作っていくためには、社会参加意識の高い若者人口を増やしていき、まちの発展に影響力を持つ存在になる必要があります。そのために、若者がまちをより良くするための政策、そして選挙について考えることは大きな成長の機会となります。主権者教育を学ぶに適格なこの機を活かし、若者のまちづくり参画への意欲を高めましょう。

社会力を身につけた青少年の育成

 子育て世代を多く含む団体である我々にとって、子供の明るい将来を考えることは責務であり、常に考えるべき議題です。私は、子供たちには蒲郡の郷土文化や歴史に触れ、地域社会と連携することで、生涯を通して社会に参画する力を養ってほしいと考えています。私の小学生時代は、豊かな蒲郡の自然や観光、優れた地元産業、音楽をはじめとした文化芸術を身近に触れることが出来ました。しかしながら、多様化した家族環境や近代化した生活環境の変化が、地域社会とのつながりに対する必要性を希薄にさせ、人とのつながりを疎遠にしていると感じています。

 現在のように不確実性の高い時代には、人々の分断を回避する方法を探し、お互いの接点を見つけることが重要であると考えます。実際、蒲郡市では「蒲郡市生涯学習推進計画」として新しい接点の可能性を広げる多くの学び舎を設け、地域のきずな作りに取り組んでいます。子供たちは親に限らず、大人の背中を見て成長します。多くの大人と接する機会を作るために子供たちの社会参画を促進し、今も未来も、子供たちが地域を身近に感じることのできる運動を起こしましょう。

 また、蒲郡青年会議所でも、パンデミック以前は社会とつながり、子供たちの健全育成を目的としたわんぱく相撲蒲郡場所を継続事業として30年以上続けて参りました。しかしながら、近年の開催中止が続いたことにより、この継続事業を知らない現役会員も増えてきています。蒲郡の文化であり、歴史を紡いできた蒲郡の相撲に触れることは地域を身近に感じることのできる大きな機会の一つです。私は、時代に適する運営と必要性を考えた上で地域社会と連携した開催を再構築する必要があると考えます。

学び富む青年会議所の拡大

 50名未満の青年会議所が75%にも及ぶ中、蒲郡青年会議所では近年の全員拡大により、毎年度末には50名に近付く会員数となります。しかしながら、卒業生や退会者が多い年もあり、会員数は不安定、運営や今後の活動に不安を生じる年が存在するのも否めません。私は、これからの拡大活動は中期、長期のビジョンを捉え、志を持ち行動する仲間を増やしていくことが大切であると考えています。新入会員の入会動機は様々ではありますが、最初から志の高さを持って入会する会員は多くありません。これを解消するため、蒲郡青年会議所に入会したいと思う多様な学び場を備える必要があると考えます。

 我々は青年経済人であります。例えば、青年経済人としての英知を分野問わず、継続的に提供される仕組みが「蒲郡青年会議所に存在する」と蒲郡に広まればどうでしょうか。昨今、社会人の学び直しに対する意欲が急増していたり、転職先の条件に技能訓練やアップスキリングの機会があるかどうかが非常に重要になっていたりします。青年会議所には発展と成長の機会が無数に存在し、会員はそれに対して行動、実践、経験を経て大きな学びを手に入れます。これを可能にする多くの「つながり」が67年のバトンをつないでいる蒲郡青年会議所には十分に存在すると考えます。安心して毎年の翌年度期首人数を前年度比増にするために、入会したいと思える学びの富む青年会議所を目指しましょう。

 また、この学べる青年会議所は新入会員に対するフォローアップにもつながると考えます。新入会員のポジティブチェンジには、青年会議所における自身の目的を出来るだけ早く明確に持ってもらえるかが重要であり、新入会員訓練講座の目的もそこにあります。私は、随時、開催するリスキリングの場に彼らを巻き込みながら、同じ志をもつ仲間を増やしていく必要があると考えます。

出向による組織強化

 まちをより良くするための運動を考える時、蒲郡青年会議所で得た経験や価値観だけではどうしても視野が狭くなります。我々は昨年度からSDGsの考えを学び始めましたが、SDGsの目標のみならず、現代における社会課題の解決には「個」ではなく協力関係を組んで行動を起こすことが必要です。

 青年会議所には、まちの発展のため広域に出て、情報や仲間を引っぱってくる機会が多くあり、私は出向の意義はそこにあると実感しています。本年度の蒲郡青年会議所は多くの組織へ出来る限りの会員に出向していただきたいと考えています。出向先の組織との関係性や情報を分断することなく共有しあい、蒲郡にとっても、世の中にとっても本当に必要とされているものを的確に捉え、奉仕に務めてまいりましょう。私は、広域にわたる多様な考えを学び活用することが、蒲郡青年会議所の組織力強化につながると考えます。

終わりに

 先人木を植え
 後人涼を得る

 世の中も、そして我々蒲郡青年会議所も新たな変革期を迎えていると感じています。先人たちが未来のために木を植え続けてきたからこそ、我々は当たり前のように生活をし、当たり前のように活動を行えています。我々も新たな変革期の今こそ、未来のため、利他の心で運動を起こし、近い将来を担う人財を創る必要があると考えます。

 青年会議所しかなかった時代から、青年会議所もある時代へ移行したとよく耳にしますが、このような運動を起こせる団体は青年会議所しかありません。我々の一歩こそがまちの未来を創ると確信しています。私はこの1年、蒲郡と蒲郡青年会議所の未来ために理想を掲げ、率先して可能性を生み出したいと考えています。この青年会議所「しか」ない時代だからこそ、会員全員で蒲郡青年会議所の運動をまちにひかり奏でていきましょう。